集塵機を買う前に、家にある掃除機で足りないかを考える
ジェルオフのあと、机に白い粉が残ります。すでに掃除機があるのだから、これで吸ってしまえば集塵機は要らないのではないか。そう考えるのは自然なことです。実際、粉を吸うという一点だけを見れば、掃除機のほうが吸引力の面では上に見えます。
ところが、掃除機のメーカーは「吸わせてよいごみ」を取扱説明書で限定しています。そして、その記載はネイルダストと無関係ではありません。ここでは可否を印象で決めず、手元の掃除機の取扱説明書で判断できる形に落とし込みます。
結論:判断はメーカーの取扱説明書にあり、役割も別物
まず自分の掃除機の取扱説明書を開いて、「吸わせない」ものの一覧を読んでください。日立のお店用(業務用)掃除機CV-G1200の取扱説明書は、固化するもの(セメント粉・合成樹脂粉・トナーなど)や導電性の微粉、薬品、直径10μm以下の微粒子などを吸わせないと明記しています。パナソニックの家庭用機MC-SS300GXの取扱説明書は、吸わせないものとして「多量の粉(消火器の粉など)」を挙げ、さらに「業務用や掃除以外の目的に使わないでください」と書いています。ジェルは光で固まる樹脂で、マシンで削れば樹脂の微粉になります。手元の機種の一覧にこれらの記載があるなら、該当する可能性を前提に扱ってください。
もうひとつ、役割の違いがあります。集塵機は削っている最中に手元で吸う機械で、掃除機は作業が終わってから吸う機械です。片手でノズルを持ちながらマシンは動かせません。したがって、掃除機は集塵機の代わりにはなりません。なり得るとすれば「作業後の片付けの一部」で、そこも機種の取扱説明書しだいという順番になります。
最初に確認する:工程ごとに可否が違う
複数条件を同時に変えず、停止→確認→照合→相談の順で進めます
痛み、熱、変色、炎症など爪・皮膚の異常がある場合は使用を中止し、メーカーまたは皮膚科などの医療機関へ相談してください。
ネイルダストを吸う場面は、ひとくくりにできません。工程ごとに分けると、取扱説明書の記載がどこに効くかが見えます。○は取扱説明書の範囲で検討できるもの、△は機種の記載しだい、×は公式の記載と食い違うため避けるものです。
| 場面 | 家庭用掃除機の可否 | 根拠になる公式の記載 |
|---|---|---|
| 削っている最中に手元のダストを吸わせる | ×適さない | 掃除以外の目的に使わない旨の記載(パナソニック)。片手がノズルでふさがり、マシンを扱えない |
| 作業後、机や床に落ちた削りかすを吸う | △取扱説明書しだい | 「多量の粉」を吸わせないとの記載(パナソニック)。粉の量と機種の条件で変わる |
| アセトンで湿ったコットンやワイプを吸う | ×適さない | 引火性のものや湿ったものを吸わせないとの記載(日立・パナソニック)。アセトンは引火性液体と公式表示 |
| 集塵機のフィルターや集塵バッグの中身を吸い出す | ×適さない | メーカーの案内はポリ袋に入れて叩き落とす方法(BEAUTY NAILER) |
| マシンのビットやパーツが落ちたのを吸う | ×適さない | 針・ピン等の硬い小物を吸わせないとの記載(パナソニック・日立) |
表の3行目は見落とされがちです。ジェルリムーバーのアセトンは、シャイニージェルの公式表示で「第四類第一石油類 水溶性液体 危険等級II 火気厳禁」「揮発性が高く、引火性液体」とされています。湿ったコットンをまとめて掃除機に吸わせるのは、掃除機側の取扱説明書が明確に禁じている行為に当たります。粉と液体を同じ片付け方に混ぜないでください。
製品側の原因:微粉の粒径と、フィルターの等級は別の話
粒径の条件は自分では判定できない
日立の業務用機の取扱説明書は「直径10μm以下の微粒子」という粒径の条件で線を引いています。ところが、ネイルダストの粒径を公表しているメーカー資料は確認できませんでした。つまり読者の側で「うちの削りかすは10μm以上だから該当しない」と判定する材料がありません。判定できない条件は、該当しない証拠が出るまで該当し得るものとして扱うことになります。掃除機メーカーへ問い合わせるときは、機種名と「ジェル(樹脂)をマシンで削った粉」という中身を伝えてください。
HEPA表示があっても、吸わせてよいごみの範囲は変わらない
パナソニックのMC-SS300GXは「HEPAクリーンフィルター」を搭載すると表示しています。同じ取扱説明書の中に「多量の粉を吸わせない」という記載が並んでいます。フィルターの等級は、内部に入ったごみをどこまで捕らえるかの話で、そもそも何を吸わせてよいかの話とは別に書かれています。高性能フィルターだから微粉を吸わせてよい、という読み替えは公式の記載から導けません。
排気の向きが作業面に戻る
パナソニックの取扱説明書は本体背面の排気口をふさがないよう指示しています。BEAUTY NAILERのサロンクリーナー(SAC-1)の注意書きにも「排気側を塞がないようご注意ください」「フィルターに付着しているダストが逆流する場合があります」とあります。排気が机の面に向いた配置で回すと、いったん吸った粉を舞い上げることになります。吸い込み口の位置だけでなく、排気がどこへ抜けるかも見てください。
使い方の原因:ネイル用の機械は「削りながら」を前提に作られている
集塵機の寸法を見ると、設計の前提が分かります。BEAUTY NAILERのWFD-1は本体の高さが4cmで、公式は「超薄型高さ4cmでマシンワークもノンストレス」と説明しています。同社のDCR-1は幅200×高さ125×奥行270mmで、アームレストとしても使える形です。どちらも、手を載せた状態で削りながら吸うことを前提にした寸法です。掃除機のノズルには、この使い方ができません。
作業後の片付けについても、専用の機械が別に売られています。BEAUTY NAILERのサロンクリーナー(SAC-1)は、施術後にダストを吸引・吹き飛ばしするハンディクリーナーで、USB Type-Cでフル充電3時間・15分の連続使用と公表されています。削る最中の集塵と、終わったあとの片付けが、メーカーの製品カテゴリの上でも分かれているということです。ひとつの掃除機で両方を兼ねさせようとすると、どちらの前提からも外れます。
吸わずに片付ける手順を先に決める
掃除機を使わない片付けは、手順を決めておけば数分で終わります。作業前に机へ使い捨てのシートやマットを敷き、削る範囲をその上に限定します。終わったらシートごと粉を包んで捨てます。吹き飛ばして散らさない、掃き集めて舞わせない、という2点だけ守れば、机の上の粉はほぼこれで動かせます。
拭き取りは、乾いた布より湿らせたワイプのほうが粉を舞わせずに済みます。BEAUTY NAILERは集塵機の手入れについて「ダストを飛散させないように収納ダストボックスを取り出し、ポリ袋などに入れてフィルター上面についたダストを叩くように取り除いてください」「ダストが飛散するおそれがありますので、マスクを着用して丁寧にやさしく行ってください」と案内しています。粉を動かす作業は、それ自体が粉を空中に戻す工程だという前提で書かれています。
厚生労働省が職場のあんぜんサイトで公開しているネイル作業向けの資料(2018年3月作成)は、ジェルネイルを削った際の粉じんやアクリルパウダーについて、喘息を引き起こす可能性があるとして、マスクを着用するなど吸い込まないようにすることを挙げています。事業者向けの資料ですが、削る作業そのものは自宅でも変わりません。掃除機で吸うかどうかを考える前に、換気とマスク、そして粉を出す範囲を限定する段取りのほうが先に来ます。
使用を中止して相談すべき場面
粉じんを吸い込んで咳き込む、ダストが目に入った、皮膚に付いて赤みやかゆみが出たといった場合は、その時点で作業をやめてください。使っているジェルやリムーバーの製品表示を手元に置き、症状が続くときは自己判断で対処せず、皮膚科などの医療機関へ相談してください。掃除機に粉を吸わせたあとで焦げたにおいや異音がした場合は、使用を中止して掃除機のメーカーへ連絡してください。分解して中を確かめることは、いずれの取扱説明書も禁じています。
よくある質問
紙パック式なら吸わせてよいですか
紙パック式かサイクロン式かという集じん方式は、取扱説明書が線を引いている場所とは別の軸です。日立の業務用機は粒径(直径10μm以下の微粒子)と材質(合成樹脂粉・トナーなど)で禁止事項を書いており、集じん方式では区別していません。方式ではなく、自分の機種の禁止事項の欄を読んでください。
HEPAフィルター付きの機種なら問題ありませんか
フィルターの等級と、吸わせてよいごみの範囲は別に書かれています。パナソニックのMC-SS300GXはHEPAクリーンフィルターを搭載しつつ、同じ取扱説明書で「多量の粉」を吸わせないとしています。フィルター性能を根拠に禁止事項を上書きすることはできません。
コードレスやハンディの掃除機なら使えますか
判断の手順は同じで、その機種の取扱説明書を読むところから始まります。なお、ネイル用として売られているハンディ機(BEAUTY NAILERのサロンクリーナーなど)は施術後の吸引・吹き飛ばしを想定した別製品で、家庭用掃除機の代用として作られたものではありません。用途の表示が違う製品を横に並べて比べないでください。
ネイルダストを吸った掃除機を、そのまま部屋の掃除に使ってよいですか
ノズルやホースの内側に残った粉が、次に使うときに出てくる可能性があります。清掃できる範囲は機種によって違うので、取扱説明書のお手入れの項目を確認してください。判断がつかない場合は、ネイル作業の片付けと部屋の掃除で道具を分ける、食事をする面では作業しない、という運用のほうが手間が読めます。
結局、集塵機は買ったほうがよいのですか
マシンで削るかどうかで変わります。マシンでジェルオフやサンディングをするなら、削っている最中に舞う粉を扱う道具が必要になり、掃除機はその役を担えません。手作業のオフが中心なら、作業マットと換気の見直しが先に来ます。判断の分かれ目はネイル集塵機はセルフネイルにも必要かで4つの条件に分けています。
まとめ
掃除機で吸ってよいかは、ネイル側ではなく掃除機側の取扱説明書が決めます。業務用機は合成樹脂粉と直径10μm以下の微粒子を名指しで禁じ、家庭用機は「多量の粉」と「掃除以外の目的に使わない」を挙げています。ジェルの削りかすは樹脂の微粉なので、自分の機種の禁止事項の欄を一度読んでから決めてください。アセトンで湿ったコットンは、粉とは別に扱う対象です。
そのうえで集塵機を検討するなら、方式ごとの手入れと消耗品を見比べたネイル集塵機の吸引式と袋式の違いへ進んでください。買ったあとにかかる交換品の費用はネイル集塵機のフィルター交換頻度で1年分に直しています。
関連: ネイル集塵機の吸引式と袋式の違い
関連: ネイル集塵機のフィルター交換頻度
編集部が整理した候補
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